注目すべき判例

 

生命保険契約に基づく高度障害保険金請求権の請求が認容された事例

対象事件 : 東京高裁 平18(ネ)第3894号

事件名  : 保険金請求、保険契約無効確認請求控訴事件

年月日等 : 平19年5月30日 第9民事部判決

 

判決文より抜粋 (関係人一部仮名)

被保険者である患者(A)が請求の時点で普通保険約款所定の高度障害状態にあったか否かについて争われた事件

 

被保険者である患者(A)の状態及び医師の記録によると、上記時点で被保険者である患者(A)は、上下肢の不全麻痺のため、排便・排尿・その後始末・衣服の着脱・起居・歩行・入浴のいずれもが自分ではできず、常に他人の介護を要する状態にあったことが明らかである。 

また食物の摂取についても、介護者の方でスプーンを持たせれば、それを何とか把持でき、傍で励ましてあげると3分の1程度は食物を何とか口に運んで摂取できるが、時間がかかり、また多くをこぼしてしまうので、それを改めて介護者が拾い集めて介護者の手で食べさせる必要がある、また、食物を飲み込む前に口にどんどん詰め込んでしまうとか、誤嚥(ごえん)することが多いので、絶えず介護者が傍で見守っていなければならない状況にあった。

また、飲み物についても、取っ手の付いたコップを持って何とか飲むことができたが、やはり介護者が傍で助力する必要があったというのである。 

そうすると、確かに被保険者である患者(A)は食物を一部は自分で口に運ぶことができた(介護者が終始手を添えるまでの必要はなかった。)が、その場合でも介護者が常に傍で見守り、終始助力する必要があったのであるから、食物の摂取についても「自分ではできず常に他人の介護を要する状態」にあったというべきである(介護者が終始手を添えていないと食物の摂取ができない場合でなければ、「自分ではできず常に他人の介護を要する状態」に当たらないと限定して解釈するのは相当でない。)。 

したがって、症状の固定時点である平成14年4月2日時点で、被保険者である患者(A)は、普通保険約款の本文及び備考欄にいう「食物の摂取・排便・排尿・その後始末及び衣服着脱・起居・歩行・入浴のいずれもが自分ではできず」「常に他人の介護を要する状態」にあったと認められる。 

そして、被保険者である患者(A)のこれらの症状は脳内出血に伴うものであったから、「中枢神経系に著しい障害を残し」の要件に該当することも明らかである。 

なお、この点につき、控訴人○○○生命は、「中枢神経系に著しい障害を残し終身常に介護を要するとき。」とは、いわゆる植物人間状態を指すものであるところ、被保険者である患者(A)はスプーンを持って食物を口に運ぶことができたことなどからみて、それには当たらないなどと主張するが、約款の解釈はあくまで約款の文言に基づき解釈していくべきであり、文言から離れた「植物人間状態」(遷延性意識障害)なる概念を持ち込むのは相当でない。 

約款の本文の定め及び備考欄の補足説明からは、「中枢神経系に著しい障害を残し」、「食物の摂取・排便・排尿・その後始末及び衣服着脱・起居・歩行・入浴のいずれもが自分ではできず」、「常に他人の介護を要する状態」にあったかどうかだけが基準となるところ、上記のように被保険者である患者(A)は、排便・排尿・その後始末及び衣服着脱・起居・歩行・入浴のみならず、食物の摂取に当たっても、介護者が常に傍に付き添い、絶えず助力をする必要があったのであるから、上記基準を優に充足するというべきである。 

したがって、被保険者である患者(A)は、定期保険特約の保険期間内の平成14年4月2日時点において、普通保険約款が定める高度障害状態に該当したというべきである。 


 

※ご家族は高度障害に該当すると訴えるも、それが否定され、もうこれ以上保険料の支払いはできないと嘆くご家族大勢います。しかしながら約款の解釈は不変なものではなく、時代とともに変わります。お一人で悩まず一緒に考えてみませんか。